「退職代行を使えば元が取れるのか」を知りたくて調べている方も多いと思いますが、結論として、答えは運営元の種類によって大きく変わります。結論を先に言うと、弁護士系・労働組合系は会社との交渉ができるため有給消化や未払い残業代の分を回収できる可能性がありますが、民間系は交渉自体ができないため経済的な回収は基本的に見込めません。
退職代行には3つの運営元があり、できることが法律上異なる
退職代行サービスは、運営元によって「会社と交渉できるかどうか」が法律上はっきり分かれています。弁護士系(弁護士・弁護士法人が運営)は弁護士としての法的代理権に基づき、有給消化・退職日の交渉、未払い残業代等の金銭請求まで対応できます。労働組合系(合同労組・ユニオン系)は労働組合法上の団体交渉権に基づき、有給消化や退職日の調整といった交渉が可能です。これに対して民間系(弁護士でも労働組合でもない業者)は、弁護士法72条により会社との「交渉」が法律上できず、退職の意思を伝える「使者」としての連絡代行のみが可能です。
弁護士法72条: 弁護士又は弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で一般の法律事件に関して代理することを業としてはならない
この規定について、東京弁護士会は2025年10月、退職代行サービスと非弁行為に関する注意喚起を公式に公表しています。民間業者が有給消化や未払い賃金について会社と交渉すれば、この規定に抵触する可能性が高いと複数の法律専門家解説で指摘されています。
損益分岐の計算式はシンプルだが、民間系は「回収見込み」が常にゼロになる
本サイトの損益分岐チェッカーは、次のような考え方で試算しています。
損益の目安 = 回収できる可能性のある経済的メリット(有給消化分+未払い残業代の見込み) − 退職代行の費用
ここで重要なのは、この「回収できる可能性のある経済的メリット」を計上できるのは、交渉が法的に可能な弁護士系・労働組合系だけだという点です。民間系は交渉ができないため、有給消化や未払い残業代がどれだけ残っていても、この試算上は回収見込み額を0円として扱います。安さだけで民間系を選ぶと、有給消化や未払い残業代の交渉まで期待していた場合に、費用に見合う結果が得られない可能性があります。
有給消化・未払い残業代の経済的価値はどう考えるか
有給休暇1日分の経済的価値は、おおまかに「月収 ÷ 月間所定労働日数」で日給換算し、残っている有給日数をかけて見積もることができます。これは簡易的な目安であり、労働基準法上の正式な「平均賃金」の算定方法(賞与を除く直近3か月の賃金総額を暦日数で割る等、より複雑な計算)とは異なる点に注意が必要です。厚生労働省の令和6年就労条件総合調査によると、令和5年の年次有給休暇の平均付与日数は16.9日、平均取得日数は11.0日、取得率は65.3%と過去最高でした。未払い残業代についても、弁護士は金額の大きい案件・法的な争いにも全面的に対応できる一方、労働組合は対応が限定的な場合があり、民間系はそもそも請求自体ができません。
費用相場は運営元によって異なり、対応範囲の広さと連動している
料金相場は情報源によって幅がありますが、複数の比較メディアを横断すると、民間系はおおむね2万円〜3万円、労働組合系はおおむね2.5万円〜3.5万円、弁護士系は意思伝達のみなら3万円前後から、交渉を伴う複雑なケースでは5万円〜10万円程度になることが多いとされています。弁護士系の費用が高くなりやすいのは、対応できる範囲が広いためであり、料金の高さそのものが優劣を意味するわけではありません。
まずは自分の状況で診断してみる
月収・残っている有給休暇の日数・未払い残業代の心当たりを入力すると、弁護士系・労働組合系・民間系それぞれについて、費用相場と回収見込み額を比較しながら損益分岐の目安を確認できる退職代行 元取れる?損益分岐チェッカーを用意しています。特定の業者名を挙げた優劣判断は行っておらず、3類型の違いを中立的に整理した上で試算します。
まとめ
退職代行の「元が取れるか」は、運営元が弁護士系・労働組合系・民間系のどれかによって法的にできることが異なるため、単純な料金比較だけでは判断できません。民間系は連絡代行のみで交渉ができない点を踏まえた上で、自分の状況に合った類型を選ぶことが大切です。
本試算は一般的な目安であり、実際に有給休暇を消化できるか・未払い残業代が認められるかは、勤務先の対応や個別の事実関係により異なり、結果を保証するものではありません。退職代行サービスは運営元の種類(弁護士系・労働組合系・民間系)によって対応できる範囲が法律上異なります(民間系は退職の意思を伝える連絡代行のみで、有給消化や未払い賃金の交渉は弁護士法72条により行えません)。個別の法的判断は弁護士等の専門家にご確認ください。(本ツールのデータの調査時点: 2026-09-12)
出典: 弁護士法72条違反の可能性に関する解説(加藤ゼミナール法律事務所)、労働組合の団体交渉権に関する解説(加藤ゼミナール法律事務所)、退職代行サービスと非弁行為に関する注意喚起(東京弁護士会、2025年10月)、令和6年就労条件総合調査 概況(厚生労働省)、退職代行サービスの依頼金額に関する解説(ベンナビ労働問題)を横断的に参照した調査時点の目安